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第2章 　初めての快感

　ノックの音。
　それだけで体が強張ってしまう。だがドアは開かずに、再びノックをする。
「美桜？　いるんでしょう？」
　若い女性の優し気な声が聞こえ、少しだけドアを開けた。
　そこにいたのは、同じメイド服を着た女性。私と変わらない身長で、綺麗に揃ったボブカットが似合っている。
「こんにちは。私、2号室の愛(あい)。入っていい？」
　大きくドアを開き、愛さんを部屋へ入れた。
「どう？　出来そう？」
　ベッドに座った愛さんに訊かれ、私は首を振りながらも口を開く。
「でも。やるしかないから……」
「ん……。私、ここに5年いるの。18歳から」
　愛さんの言葉に、目を見開いた。
「美桜も、親の借金でしょう？」
　恥ずかしい事だが、私は頷いて見せた。
「みんな、殆どそうだから。私は今、時給5千円。勤務は1日15時間だから、1日で7万5千円。日曜と祝日は休みで、1年で約2200万。まだ、1億ちょっとにしかなってない。」
「え？」
「買い取られた金額まで、働くの。最初は時給3千円からだけど、ご主人様に気に入られれば、すぐ上がるからね」
　自分は3億円で買い取られた。愛さんと同じ時給になっても、15年は働くことになる。そう考えて、俯いてしまった。
「私は、長男専用のメイド。美桜は、三男専用。兄弟3人に、それぞれ専用のメイドがいるの」
　これからの大切な事だと思い、私は愛さんの話を真剣に聞く。
「長男と次男には専用メイドが2人ずついるけど、三男は、まだ美桜だけ。この屋敷では、大学を卒業して、23歳になると、専用のメイドを持てるから」
　複数いた方が、少しはマシだろうと考えてしまう。
　早くもう1人買えばいいのに。買われる子には悪いが、オークションに出されれば、どこかへ買われるしかないのだから。
「言葉遣いは丁寧に。ご主人様の言う事は、全て聞く。そうするしかないの。この部屋も食事も、全部が無料だからね」
　愛さんも、この仕事を楽しんでいるわけではないだろう。だが絶対服従の世界に諦め、もう慣れたのかもしれない。裸同然の自分達に、部屋や食事付きでこんなに稼げる仕事は無いから。
「何かあれば、いつでも2号室に来て。私、メイド長だから。じゃあね」
　そう言って、愛さんが部屋を出て行く。
　私は、諦めの溜息を漏らした。