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第19章 　決別

　先に入ったご主人様が手招きをする。
　広い湯船に向い合せに浸かろうとすると、ご主人様が首を振っている。
「美桜、違うよ。逆。逆向きになって」
　そう言われてお尻を向ける格好になると、何かされるのかと思って緊張した。
　ゆっくりと腕が回され、後ろから軽く抱きしめられる。
「美桜とやってみたかんだ。こういうの……」
　悪戯っぽく言うご主人様に、緊張が解けた。
　ご主人様の行動は、その時によって全く違う。
　オシオキ部屋で酷い事をされたり、こうやって優しくなったり。だがその全てが、ご主人様に変わりはない。
　この先10年以上は、そんなご主人様と一緒にいられる。
「大丈夫？　もう痛くない？」
「はい。大丈夫です」
　しっかりと答えた。
「さっき起きた時、夢かと思ったよ」
「えっ？」
「美桜の処女を、もらった事が」
　私も目覚めた時は、同じ感覚。痛みは無く、イったまま眠ってしまったから。
　ザーメンが流れ出てきて、本当なんだと実感した。
「リアルな夢だと思ったけど、これで美桜は、やっと僕のモノだね」
　私は何も言えずに頷くだけ。
　初めてのセックスでイくなんて、少し恥ずかしい。
　一瞬だったが痛みもあって、出血もしたから、確かに処女だったはずなのに。それはご主人様も認めていた。
　勿論今まで、ご主人様以外に触られた事さえない。
「初めてでイくなんて、美桜はやっぱりいやらしいね」
　追い打ちをかけられるように言われ、私は無言のまま。
「土曜の美桜の1日は僕が買ったんだから、僕の好きにするからね。無茶はさせないけど」
　からかうようなご主人様の笑い声が、心地好いと感じる。
「ロリータのオークションはさ、6人しか出品されてなかったんだよ。毎回、それくらいらしいけど」
　ご主人様が、行って来たオークションについて話し始めた。
　内容は面白かったが、段々と耳に入って来なくなる。
　私は、この人とセックスをした。
　もう処女ではない。
　この先、ご主人様にもっとご奉仕出来るはず。
　すぐに大広間で、と言われたら、まだ恥ずかしくてセックスに集中出来ないが、そのうち出来るようになるのだろう。
　あの廊下でも。
　私は、そんな事をぼんやりと考えていた。