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奴隷メイドオークション ~正しいメイドの育て方~ 改訂版
第4章  奈々の事情


「お父さんもお母さんもぉ、パチンコとか競馬とかが好きで、お金を借りまくってたからぁ。引っ越してもぉ、いつもドアに紙がいっぱい貼られててぇ」
「え?」
 借金の取り立てでそんなことがあるのは、ドラマの中だけでしか知らない。それも、脚色だと思っていた。
「10歳の時に知り合いの家に行くって連れてかれてぇ、オークションの日までいた部屋の方が、家より綺麗でしたぁ」
 奈々ちゃんは笑っている。
「怖く、なかったの?」
「はい。家より怖い所は、無いと思ってたからぁ。毎晩電話が鳴り続けてぇ、夜中もドンドン玄関を叩かれたりしてぇ」
 もう何も言えずに聞いていた。
「このお屋敷の方がいいですぅ。ご主人様とするのは最初だけ怖かったけどぉ、すぐ慣れたしぃ」
 笑顔で言える奈々ちゃんが、不思議だった。私はまだ、そこまで吹っ切れない。
「最初はぁ、広くて綺麗なマンションに住んでたんですぅ。奈々のお部屋もあってぇ。あっ、ここを曲がりますぅ」
 そう言って奈々ちゃんが、階段の少し先を右に曲がる。
 曲がる前の先に見えたのは、大きな両開きの玄関ドア。ご主人様が言った通り、鍵は掛かっているだろう。
「知らない男の人達が来て、奈々のベッドとかぁ、勉強机とかぁ。ピアノも。家の冷蔵庫とかもぉ、運ばれましたぁ」
 取り立てが出来ず、差し押さえた物を持って行かれたのだろう。私の家も出て来る前は、差し押さえ、と書かれた紙があちこちに貼ってあった。私の部屋には無く、価値のある美術品や絵画だけだったが。
「前の家は、8階建てマンションの6階だったのにぃ、引っ越したのは、2階建ての2階でぇ。それも狭くてぇ。マンションじゃなくて、アパートって名前でしたぁ」
 奈々ちゃんは笑っているが、生活レベルを下げざるを得なかったのだろう。
 友達はみんな持ち家か持ちマンション。いずれも豪華で広く、私はアパートというものの内部を見たことが無い。世間知らずと言われても、仕方がないだろう。
「お父さんとお母さんの仕事はぁ、パチプロって言ってましたぁ」
「パチ、プロ?」
 私にも、よく分からなかった。

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