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ロリちゃん作品集 (一章読み切り式)
第37章 引っ越し
時間が経つのは早い。
麻菜の引っ越しは明日の日曜日。
その間セックスは無かったが、毎晩電話で話していた。
麻菜はずっと泣いていて、俺が暫く無言になることも多かったが。
それでも、“遠距離恋愛”を続けようと誓った。
言葉通りに上手くいくかは分からないが、お互いの気持ちが変わらなければ、麻菜が大人になって一人暮らしも出来る。
トトトと、聞き馴染みのある音。
ドアがノックされ、麻菜が入ってきた。
「お兄ちゃん……」
表情は暗い。
「もうすぐ、引っ越しのトラックが来るんだって……」
何も言ってあげられなかったが、取り敢えず部屋に入れた。
二人とも無言。
21歳にもなって、どうしようもないことが起こるとは思っていなかった。
「麻菜達は、車で行くから……」
「車?」
「うん……」
普通、飛行機か新幹線だろう。
「麻菜。どこに、引っ越すんだ?」
隣からいなくなることばかりに気を取られていて、訊くのを忘れていた。
「ヨコハマ、だって……」
「横浜!?」
「そう……」
大きな溜息をつく。
「麻菜……。ここは東京だぞ? 横浜なんて、車で一時間じゃないか」
「え?」
麻菜は勉強が苦手。日本地図なんて、頭にないのだろう。
「毎日は無理だけど、週末には会いに行くよ」
「ホントぉ!?」
麻菜が、ここまでおバカだと思わなかった。
俺ももっと遠くへ行くと思い込み、勝手に色々と考えていたなんて。今思うと俺もバカだった。
「お兄ちゃんに会えるの!?」
「ああ。週末は、用事を入れないようにするから」
気が抜けた状態。
あんなに悩んだのは、一体何だったんだ。
隣より横浜が遠いことは確かだが、父親の車を借りれば毎週だって通える。何なら、そのためにローンで車を買ってもいい。
麻菜に会うためなら。
「お兄ちゃん?」
麻菜は不思議そうな顔。
やっぱり麻菜は子供なんだ。
俺には近いと思えても、子供には遥か遠くに感じる。