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愛しい記憶
第12章 新生活(回顧)
何もかもを置いて、この場所に来たかった。
でも、それは叶わず、楓が諦め悪く俺についてきた。
何をそんなに執着しているのか。
俺の何がそんなにいいのか。
理由が分からない。
でも、盲目的に姉ちゃんを愛してる俺が、言えたことじゃない。
何となく分かっている。
諦められない恋ほど、理屈ではない気持ちが身体にこびりついて離れない…
きっと楓も、そんな想いに取り憑かれている。
何もかもを忘れたいと思いながら、姉ちゃんが想いを馳せていた古代エジプトの世界を知りたくて、この大学を選んだ俺には、やはり楓を責めることはできない。
そして迎えた入学式。
隣に座ったチャラチャラした男がとても楽しそうに話し掛けてきた。
新しい出会いに胸を弾ませている。
きっとこれが“普通”なんだろう。
何をしていても異常な俺。
自分は普通に暮らしていたつもりなのに、周りの物差しで計ると、俺はそこから外れてしまう。