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愛されたいから…
第6章 大地の思い
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律子が俺の部屋から出て行った。だから一体何しに来たんだよ…、あの女は!?

そんなお嬢様の気まぐれには俺はイルマみたいに甘い顔をする気にはならない。

俺は小学生までは田舎の小さな町に住んでいた。親父は真面目なお人好しで仕事はタクシーの運転手をしていた。俺が物心が付く頃には地味な田舎で派手好きなお袋が親父の名前で借金をしてホストクラブ通いにハマっていた。

気付けば一千万という借金だけを残して俺と親父からお袋はホストの男と逃げていた。だから地味な親父がローンで買った家もなんもかんもが借金取りに持って行かれ、俺は学校にも行けず、親父は仕事も出来なくなるくらいに借金取りに追い回されていた。

そんな親子に親戚達は嫌な顔をして、結局、親父の学生時代の友達という人が現れて親父と俺を助けてくれていた。その人は横暴な借金取りにはしっかりと弁護士を入れてくれて

『どうせ俺はあまり帰らない家だからしばらく居ていいよ。』

と俺達が住む所まで作ってくれた。相沢 恭一さん…、明人という名の親父を

『明ちゃん。』

と嬉しそうに呼ぶ親父の親友はこの地味な田舎を出て都会のテレビ局でプロデューサーというカッコいい仕事をやっていた。独身で広くて綺麗な高級マンションに住み、ダサくてお人好しなだけの親父に何故か至れり尽くせりをしてくれた。

それから恭一さんの紹介で親父はタレントを送迎する運転手の会社に入れてもらい俺は学校を転校してやっと親子で落ち着いた生活を送る事が出来るようになっていた。

家賃も光熱費も恭一さん持ちの生活で親父はなんとか借金を全て順調に返し、俺が映像の専門学校に行けるくらいの事はしてくれた。

専門学校を出てからはやはり恭一さんの紹介で俺はテレビカメラマンになっていた。カメラマンになって俺は恭一さんのマンションをすぐに出た。

それは俺なりの恭一さんへの恩返しのつもりだった。親父は全く気付いてないけれど、恭一さんは本当に親父の事が好きなんだと俺は気付いていた。

何故なら親父が恭一さんの為にと飯を作ると恭一さんは少し照れたように赤い顔をして飛びっきりの笑顔を親父に向けていたからだ。
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