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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第12章 新たなる出発点-千弥

綺麗に整理をして、漸く事務所らしくなったこの空間。デスクが数個と棚が一面の壁全てを使い、後は小物くらいしかないシンプルさ。初めて入った頃が嘘みたい。

「やっと人が住めるほどにはなったね」
「人を呼んで商談出来る程度の間違いです蓮さん」
「近頃の千弥はキツいキツい」
「あれを全て整理もすれば言いたくもなるでしょう」
「……すまないとは思っているよ」

広く使えるようになった、蓮さん用のデスクに座り、口に手を当てながら目線を反らすなんてズルい。
更に言えば、フードコーディネーターなのに、キッチンスペースは無く、あるのは普通の家感覚の給湯室くらいなのよね。そこも物に溢れていたけれど。
今は使えるようになった給湯室で、紅茶と買って来たお菓子を盛り付け午後休憩。

「そう、専用のキッチンスペースなんて必要ないの?」
「ほとんどをマンションのキッチンでやっていたから、あまり必要性は感じなかったんだよ」
「あの広いキッチンって、そんな意味もあったんだ」
「まぁ……。あのキッチンが目的で、マンションを占拠した俺だからね」

じゃあ、キッチンがメインで後はオマケだったんだ。だから初めて蓮さんのマンションに入った時、あまり生活感がないと思ったのはこのせい。本当にキッチンと自分の部屋しか使っていなかったんだね。

「今は充実しているよ。マンションも事務所も……。これも全て千弥と出逢ったから、千弥の周りに人が集まったとも言うね」
「煽ててもなにも出ませんよ蓮さん?」

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