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秘密のピアノレッスン
第13章 12年
「はーい!じゃあ、みんなー、クラッカー持った?」

佳苗先生の元気な掛け声で、子供たちはクラッカーを掲げた。

「電球とピアノには当てないでねー、じゃあ行くわよー。せーのっ」
「メリークリスマース!!!」


クラッカーがいくつも弾ける音が聞こえてきて、みんなすごく楽しそう。
かどかわピアノ教室では、小さい生徒たちを集めて、毎年クリスマス会を行っている。
私も、小学生までは参加していたけれど、こうして見ると、随分月日が経ったのだなと思う。

「更紗ちゃんがピアノを始めたのは、ゆいちゃんぐらいの時よ。このぐらいあなたも小さかったのよぉ」
と、腰はほとんど良くなったという佳苗先生が、私の背中を叩いた。

最年少のゆいちゃんは4歳。耳の下でふたつ髪を纏めて、かわいらしいけれど……。
ママがいない……と今にもぐずりそうになっていた。
原則、子供だけの参加となっているので、お迎えはパーティーが終わる3時ごろ。

「ママ……いない」

小さい子の扱いには慣れていないけれど、ママのいない心細さはよくわかる。

「じゃあゆいちゃん。お姉ちゃんとくまさんと一緒にいよう」
と、レッスンバッグにつけていたくまの人形を外して、ゆいちゃんの前で手を動かしてみせた。
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