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秘密のピアノレッスン
第5章 不安
12月に入ったころ、元々ほとんど確定ではあったが、付属の女子大に合格が決まった。
すぐに母に伝えよう。母の望む進路にしたのだから、喜んでくれるはずだ。

学校から帰ってきて、リビングで趣味のお花を生けている母のところまで向かった。

「何ですか、はしたない。家の中を走るなんて」
「ごめんなさい……ママ、無事に大学合格したの」

息を切らしながら報告をした。けれど、返事は思ったものと違っていた。

「当然でしょ、楽な道を選んだんだから。出来がいい子たちは、外部の大学を受けるのよ」

母は嘲笑にも見える微笑を浮かべて、私から視線を外すと、また手元を動かし始める。

楽?
……がんばりたかったことを諦めたのに?

私は、自分が楽な道を選んだようには思えない。


ママが、「共学なんて堕落してしまうわ」と言っていたのに。
ママが、「付属の女子大じゃないとだめよ」と言っていたのに。

ママが……いつも、私の進む道を閉ざすのに。

ママ……。


これでも、ダメなの?

なぜ、笑ってくれないの?
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