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秘密のピアノレッスン
第5章 不安
きゅ……とセーラーのスカーフを握りしめ、母から離れて自分の部屋に戻った。
制服を着替える気力もなく、ただ、息を殺して泣いた。
母はいつも、そうやって私を傷つけて、ズタズタにして、簡単に立ち上がれなくする。


木曜日が待ち遠しかった。その日まで指折り数えて、家から見える先生のマンションを見上げたりした。

先生に会えるまで、感情を殺して、ただ毎日のことを黙々とこなして、木曜を迎えた。

ピアノを弾いている時は、母と会わなくて済む。
先生の楽譜を、穴が空きそうなほど眺めて、ベッドではテディベアを抱いて、一心不乱に悪癖に耽る。

回数を重ねるごとに、妄想はよりリアルになっていった。

先生が、ここを弄ったら。
先生の指が、ここに入ったら。
そして、音を立てて掻き混ぜられたら……。

先生の指が……ここに……。

「あ……っ」

つぷ……。

ついに、自分で指を入れてしまった。
けれど、中でぬるぬるに蠢く生暖かい感触に驚いて、すぐに指を抜いた。

指が、ぬらぬらと光っていた。
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