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記憶の彼方に眠る恋
第7章 失われた記憶
 次の週末―――。
 拓麻はひとり、自室で暗い顔をして座っていた。
 机の上には、例のお守りがある。
 拓麻は涙を堪えながら、独り言を言った。
「もう今さら、望未さんとの縁談を断るわけにはいかないんだよなぁ。もう色んな準備が既に整ってしまってるし……」
 記憶を取り戻したことにより、拓麻は、自らが過去に何度も縁談を断ってきたことを思い出していた。
 ほとんどの相手は、ただ一度断っただけで、諦めて二度と持ちかけてこなかったのだが、望未の親族だけは違ったのだ。



 拓麻が縁談を何度も断った理由は、ひとえに「初恋の相手である紗友莉と、もしかしたら万が一にも、結ばれるかもしれない」という淡い期待があったからだった。
 紗友莉への強い想いがあったからこそ、拓麻は何度も縁談を断っていたのだ。
 ところが、紗友莉とはかなり疎遠になってしまっており、次第に絶望感が拓麻を襲い始めることに。
 そんな折、「三顧の礼」ではないが、三度までも、縁談を持ちかけてきてくれた伊集院家に対し、拓麻がとうとう折れたわけだった。
 拓麻の中には、「もはや、紗友莉との恋に望みはない」という諦めの念が芽生えていたのだ。
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