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蜜会
第2章 湧き出す
「へぇ、瑠璃ちゃんは市役所に勤めてるんだ。公務員は安定してるからいいよね」

「安定ってことについて言えば、そうでしょうね」


 安宅さんは私が車に乗ってすぐ、私の名前を聞いたら「瑠璃ちゃん」と呼んできた。

 ほぼ初対面だけど送っていただいている手前、前方を向きっぱなしもどうかと思ったので、ときおり私は安宅さんの顔を見た。

 まぁ若いころはイケメンだったのかな。

 今もわりとかっこいい部類かもしれない。

 シャツごしに見たけど、おなかが出ているなんてこともないっぽいし、横顔のラインも綺麗で鼻筋は通っている。

 うちの父は遺伝もあるんだろうけど、現場監督だからヘルメットのせいでだいぶ髪の毛もキている。

 でも安宅さんはそんなことにはなっていない。

 白髪もときおりチラっとは見えるけど、別に目立ってもいない。

 聞いたら四十五歳になったばかりだということで、「四捨五入したら五十だよ」とにこにこしながらハンドルを握っており、赤信号で停まったときだけこちらを向いて話してくれる。
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