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第26章 惑疑 章82第



「話したくねぇならそう言えよ」


「いや、そうじゃな、くてっ…」



慌てる桜の背後で物音がする。


そして、ふと視線をずらすと、玄関入ってすぐの風呂場の扉が目に入った。



「────────…っ…」



明かりがついていて、シャワーの音が響く。


その事が何を示しているのか分からないほど俺もバカじゃねぇ。



「ごめんなさい、色々事情があって…っ。でも今は話せない、です」



未だに慌てている桜の言葉を聞きながら俺は自分の足下を見つめた。



「はぁ?」



キツくなる言葉を止められない。


事情、か。


便利な言葉だ、本当。




「お願いです、からっ……あと少し、待ってくださいっ……」



何をそんなに喚く事があるんだろうか。


息を吐くように、嘘を吐く桜を見てられず俺はそのまま俯いていた。




「話せるようになったらちゃんと説明しますからっ…」



……説明なんていらねぇ。


もう用無しだって言うならそれだけを吐き捨ててくれればまだマシだ。




「だからっ……今日は帰ってください……っ」


「……………」


「ほんとに……ごめんなさいっ……!!」



バタン!っと扉が閉まる音が響く。


その裏でガチャガチャと鍵やらチェーンやらを勢いよく掛けているのが分かる。



……一方的にワーワーと騒ぎやがって。


挙げ句ロクな言い訳もなしに締め出しときた。


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