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もう私、生徒じゃない
第5章 優しい手
そっと労わるように差し出された手に

縋るように両手を絡ませ引き上げてもらう。

お礼を言おうにもうまく動かない唇と

立つことはできたもののガクガクと震え

使い物にならない足。

そしてまだ離れていない手。

テンパった頭では処理しきれなくて

一向に動き出せない。



そんな私を安心させるように

先生は「おいで」と優しく言って

私を1階の休息スペースに導いた。



途中、私が本来行こうとしていた

自販機の前で足を止め

デニムの尻ポケットから財布を出す。

片手は私のせいで塞がっていて

それでもその手を緩めることなく

片手で器用に1000円を取り出し、

暖かいミルクティーを2つ購入する。

財布を元の位置に仕舞い

お釣りをデニムの前ポケットにそのまま突っ込む。

そしてその手でペットボトルの蓋の部分を

指と指の間で挟むようにして2本とも取り出す。

その間も私と繋がれた手は離さないでいてくれた。
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