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籠鳥 ~溺愛~
第30章
(会いたかったに決まっている!!)
美冬の手からバッグが滑り落ちる。
震える腕を持ち上げ恐る恐る鏡哉の背に回し、コートの背中にしがみ付いた。
鏡哉の背が少しだけ震えていた。
背の高い鏡哉の中にすっぽりと収まっているのにもっと彼に強く抱きしめてほしくて、背中に回した腕に力を込める。
(会いたかった……会いたかった……
こうやって抱きしめられて、抱きしめたかった!)
胸が苦しくて嗚咽が漏れる。
鏡哉のコートの襟が自分の熱い涙に濡れていく。
「………っ」
しゃくりあげる美冬に気付いた鏡哉がその腕を緩める。
「美冬?」
頭上から鏡哉の心配そうな声が降ってくる。
両手を頬に添えて上を向かされ、指先で零れ続ける涙を拭われる。
「泣かないで……泣くな、美冬」
覗き込んでくる鏡哉の顔が苦しそうに歪む。
二十歳の誕生日で枯れたと思った涙は、涙腺が壊れたように止められない。
「む、り……だって」
美冬はしゃくりあげながら、細切れに言葉を繋ぐ。
「美冬」
鏡哉が腰を曲げて美冬の瞼に、頬に口づけを落とし涙を吸い取っていく。
「ず、っと、あ、あいたか――」
会いたかったと言い終わる前に美冬の唇は鏡哉のそれで塞がれていた。
「んっ!」
はじめは躊躇いがちに啄んできた鏡哉だったが、美冬がしがみついた腕に力を込めたのに気づいたのか徐々に激しく奪ってきた。
唇を味わうように舌で舐められ、唇で食まれる。
その度に美冬は切なさが増し、鏡哉に縋り付く。
気が付くと背伸びをして自分からもっとと鏡哉にキスをせがんでいた。
鏡哉の唇が不意に離れる。
それを追いかけるように瞑っていた瞼を開くと、また涙が零れ落ちた。
こちらを見下ろしてくる鏡哉の表情は苦しそうだった。
腰をぐっと抱き寄せられた時、自分の腰骨に鏡哉の昂りが押し付けられた。
「………っ」
咄嗟に息をのんだ美冬だったが、やがて全てを受け入れるようにゆっくりと瞼を閉じた。
それと同時に鏡哉の熱く潤んだ唇が押し当てられ、マフラーを取り除かれコートのボタンを外される。
美冬の口腔に入り込んできた鏡哉の舌が歯列を辿り、粘膜を舐め上げられる。
舌を絡み取られ激しく吸われると、美冬の息が上がる。