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籠鳥 ~溺愛~
第34章
二十を超えた今、自分の無鉄砲さがやっと分かる。
(自分を迎えに来てくれて――? その後の事なんて、まったく考えていなかった……ただ会いたくて、ずっと傍にいたくて、それだけで――)
「………っ!」
美冬は熱いほど火照った頬に震える掌を添える。
「美冬?」
自分の前でみるみる赤くなっていく美冬に、鏡哉が心配そうに声をかけてくる。
「……あ、会いたかった」
視線を鏡哉から外して、震える声で美冬は口を開く。
「うん」
「あ、会えたら……ずっと傍に、いたかった――」
「ああ、私もだよ」
鏡哉が口元を緩めて微笑む。
「で、でも――」
「でも、それより先のことは考えてなかった?」
美冬の心を見透かしたように鏡哉が続ける。
「………っ!」
言い当てられて、美冬は言葉を詰まらせる。
鏡哉の形の良い唇からくすりと笑いがこぼれる。
「美冬らしいな……全然私に何かを求めない」
そんな事はないのに、自分は鏡哉に迎えに来てほしいと求めていたのに、鏡哉はそう言う。
「でも私は君が17歳の頃から、結婚しようと思っていたよ」
「え!?」
そんな早くから鏡哉が自分を求めてくれていたことなど知る由もなかった美冬は、驚愕する。
「っと言っても、美冬が大学へ進学した位に、と考えていたんだけど」
「………!」
鏡哉のその言葉に美冬はすっと現実に引き戻された。
「あ……わ、私には大学があるし……」
「うん。知ってる」
「が、学業と両立できないだろうし……」
「そんなことはない。昔も君は両立できていたし、私も協力する」
「そ、そう! 私来年から休学するんです。学費貯めなきゃいけないから、バイトで鏡哉さんの傍にいられないし……」
「休学なんて、させる訳ないだろう?」
今まで優しい声で美冬に答えてきた鏡哉の厳しい声に、美冬は息をのむ。
「え?」
「私と結婚しようがしまいが、君が弁護士になるまでの諸費用は全て私が面倒をみる」
きっぱりとそう言い切った鏡哉に、美冬は驚嘆する。
「な、なんでっ?」
「なんでじゃない。私がそうしたいからそうするんだ」
傍若無人なその物言いに、美冬は混乱する。
「ええっ! そ、そんな……」