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籠鳥 ~溺愛~
第5章
笑いが止まらないとは、こういうことを言うのだろう。
鏡哉の第一秘書、高柳は自身の主を横目で伺い嘆息する。
現在は週末の役員定例会議。
いつもなら難しい顔をしてそれぞれの報告を聞いている鏡哉が、今日に限っては一分に一回にやけている。
最初に気付いたのは高柳だったが、時間が経つにつれ徐々に役員達も鏡哉の様子に気づき始めたようだ。
数人の役員が当惑した表情で社長をちらちらと伺っている。
(どうせ、美冬ちゃんと何か良いことがあったのだろうが――)
高柳は鏡哉が溺愛している美冬の顔を思い浮かべる。
一年少し前「子猫を拾った」と社長が楽しそうに言った時、高柳は直感で「彼女ができた」のだと感じ取った。
しかし数日後に高柳が目にしたものは、本当に子猫のような女子高生、美冬だった。
小さく華奢すぎる体に、人形のように大きな瞳の整った幼い容姿。
人目を引く子供だったが、確かに鏡哉の「彼女」ではないと思った。
不幸な事故で両親を失った美冬は雇い主である鏡哉に従順で、いつも瞳をキラキラと輝かせて鏡哉に付き従っていた――そう、本当に子猫や子犬のように。
それから一年経っても二人の関係は変わらないようだったが、今日の鏡哉の様子から、高柳はついに二人は結ばれたのだと感じ取った。
(これからより一層、気を付けなければならない。社長が淫行罪で捕まらないように――)
半分冗談、半分本気で高柳はそう思う。
鏡哉の声が聞こえて視線を移すと、本人がインドの現地法人との合併について説明を始めていた。
この会社はファミリービジネスで創業者一族が歴代の経営権を持っている。
アメリカの大学をスキップで卒業しMBAを取得した鏡哉は、社長として就任した当初、どの役員からも「お飾り社長」と思われていた。
しかし、一切の妥協を許さない経営方針や自身のカリスマ性でもって、鏡哉はすぐに社長として当社役員のみならず、財界からも認められることになる。
一方でその経営のせいで敵も作りやすい。
せめて美冬が大学に入るまでは二人の関係を外に漏らしてはならないと、高柳は帯を締め直す思いだった。
会議が終了し、鏡哉が社長室へと戻る。
席に着いた途端、鏡哉の頬が緩むのを見て、高柳は遠まわしにせず直接的に忠告した。