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籠鳥 ~溺愛~
第7章   

(なに……何が、起こったの……?)

 一人寝室に取り残された美冬は、思考がまとまらず呆然とその場で固まっていた。

(鏡哉さんは、私を、抱こうとしたの――?)

 性に疎い美冬でも先ほど施された行為が、男女の性の営み――SEXだということは分かる。

 そして痛がった美冬に気づいて、途中で鏡哉がその行為を止めたことも。

 どうして――。

(どうして? なんで……? 何がどうしてこんなことになってしまったの?)

 まだ二人はお互いの気持ちを確認しあったわけではない。

 美冬とて、数日前に鏡哉に対する自分の恋心に気付いたくらいなのだ。

 なのに、どうして。

「……わたしの、せい――?」

 美冬は自分の唇に指を触れる。

 あの時――初めて鏡哉に口移しで薬を飲まされたとき、

『ごめん。でもこれは、美冬ちゃんのファーストキスじゃないから――』

 そう言われ、美冬は泣き出したいほどショックを受けた。

 美冬にとってあれは紛れもなくファーストキスだったのだ。

 それも大好きな鏡哉との、大切な、初めてのキス。

 それなのに鏡哉はそうじゃないと言ったのだ。

 悔しかった。

 どうやっても鏡哉には自分が子供にしか映らないんだと、思い知らされた。

 だから、せがんでしまった。

 本当のファーストキスを――。

 美冬はあの時、必死な思いで鏡哉のシャツの袖を握ったのだ。

 鏡哉がそれに答えてくれたのは、死ぬほど嬉しかった。

 そして美冬は心の中で、もうキスじゃないなんて言わせないと思った。

 しかし、事態は思わぬ方向へ動いた。

 鏡哉が自分の体をまさぐり始めたのだ。

(たぶん、私のせいだ――男の人って止まらなくなるって聞いたことある)

「くしゅんっ」

 急に寒気が襲い、美冬は大きく身震いする。

 気だるい体を起こすと、自分のあられもない姿を見て眩暈がした。

(こんな恰好、鏡哉さんに見られてたなんて! あ、穴があったら入りたい――)

 ネグリジェを元に戻すと、美冬はがっくりと項垂れた。

 しかしそれも長くは続かなかった。

 寒くて体の震えが止まらなかったのだ。

「お風呂……入ろうかな」

 寝汗もかいているみたいで、ネグリジェはしっとりと濡れていた。

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