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籠鳥 ~溺愛~
第7章
美冬はだるさを我慢しながらベッドから降りると、寝室の扉をゆっくりと開いた。
リビングへ向かうが、案の定、鏡哉はいなかった。
先ほどから物音がしなかったので、なんとなく外に行ったのだろうと思っていた。
美冬はジャグジーを沸かそうとバスルームに入ると、そこにはすでに湯が溜めてあった。
「鏡哉さんが……?」
鏡哉の不器用な気遣いに頬が緩む。
ネグリジェを脱いでジャグジーにつかろうとした美冬は、鏡に映った自分の体を見て小さく悲鳴を上げた。
「や、やだ……」
白く頼りない美冬の肢体には、幾つもの赤い跡が残っていた。
顔がみるみると火照る。
「鏡哉さんの……所有の証し?」
前に頬や額にキスされたとき、なぜキスするのかと問うたところ、鏡哉は『所有の証し』とうそぶいていた。
胸につけられた一つにそっと指先で触れる。
「鏡哉さん……好き――」
気が付くとそんなことを口走っていた。
美冬は我に返ると恥ずかしくなって、急いでジャグジーの中に飛び込んだ。
(そうよ。要するに、鏡哉さんに本当に自分を好きになってもらえればいいだけの話よね!)
お風呂から上がりさっぱりした美冬は、いつになく前向きになっていた。
体温計で体温を測ってももう36度に下がっていたし、体も幾分楽になった。
鏡哉の寝室のシーツを変え、冷蔵庫にありあわせの材料で夕飯を作る。
作り終えて時間を見ると20時になっていた。
「鏡哉さん、会社に行ったのかな?」
今日一日自分の看病をしてくれていたのだ、きっと会社に行って仕事をしているに違いない。
美冬はまだ食欲がなかったのでお昼のリンゴの残り半分を食べながら、リビングのソファーでテレビを見るともなしに見ていた。
しかし気を抜くと、二日分の睡眠不足の睡魔が襲ってくる。
いけないとは思いながらも、美冬はそのままソファーで眠り込んでしまった。
ピピピピ。
目覚ましのアラーム音。
気が付いてアラームを止め時間を確認すると、朝の7時を回っていた。
「わあ!」
(寝過ごしちゃった! って、あれ、私、いつの間にベッドで寝てたんだろう?)
そこは自分の部屋だった。