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籠鳥 ~溺愛~
第7章
優しい高柳はそのまま肩を貸してくれて美冬が泣き止むまで待っていた。
しかし泣き止んだ美冬は高柳が手を変え品を変え理由を聞き出そうとしても、ただ「自分が悪い」と言って決して答えようとしなかった。
高柳は「あのバカ社長を説得するから、待っていて」と言って、自分の携帯番号を置いて帰って行った。
しかしその後、鏡哉は一度もマンションには帰ってこなかった。
いや、鏡哉のウォークインクローゼットの中身が減っていることから、きっと鏡哉は美冬のいない時間を狙って部屋に戻ってきているのだろう。
毎日夕飯を作っては翌日に捨てることを繰り返していた美冬は、これ以上ないほど打ちひしがれていた。
(私はなんて馬鹿だったんだろう、愚かだったんだろう……鏡哉さんをこんなに苦しめているのに気付かずにいたなんて――)
「鏡哉さん……」
広いメゾネットの部屋に美冬の声が響く。
ここはこんなにも広くて寂しい部屋だっただろうか。
鏡哉が居たときは気づかなかった。
なぜなら鏡哉はいつも美冬をからかい、褒め、温かく包んでくれていたから。
その鏡哉の気配がない部屋は、こんなにも空しい部屋だったのだ。
(ここは、鏡哉さんの部屋なのに――)
「……私がいちゃ、いけないんですね?」
美冬は膝から床に崩れ落ちた。
目頭が熱くなり、視界がぼやける。
涙が止まらない。
鏡哉に会う前、両親を亡くして一人で生活しているときでさえ、こんなにも泣いて暮らしたことはなかった。
涙が枯れてこれ以上出ない、そう思えた数日後。
美冬は高柳の携帯電話の番号を押していた。