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籠鳥 ~溺愛~
第7章
不思議に思ってそのままリビングへと出ると、ダイニングテーブルの上に一人分の朝食が用意されていた。
メモが一枚添えられている。
『朝食食べられるようなら、食べて。学校は無理せず休みなさい。 鏡哉』
「鏡哉さん、帰ってきてたんだ……」
テーブルには鏡哉特製のオムレツが乗っている。
ぐ〜〜。
現金なお腹の虫が鳴く。
「いただきます」
美冬は朝食を食べながら、昨日リビングで寝てしまったであろう自分を部屋まで運んでくれたのは鏡哉だと悟り、顔を真っ赤にした。
(帰ってきたら、お礼いおう)
早く夜になって、鏡哉に会いたい、そう思いながら美冬は学校へ行った。
しかし、その美冬の願いは叶わなかった。
(どうして――?)
「どうして私を避けるの、鏡哉さん……」
あれから三日。
夕飯を作っては鏡哉を待ちリビングで寝込んでしまい、気が付くと朝、自分の部屋で寝ていることが続いている。
唯一の救いは、鏡哉が美冬の作った夕食を食べてくれていることだけだった。
自分のせいで鏡哉が帰ってこないのだという自己嫌悪でとぼとぼと学校の昇降口を出た美冬は、校門のあたりに人だかりが出来騒がしいのに気づくと、おもむろに走り出していた。
(鏡哉さんだ! きっと鏡哉さんが迎えに来てくれたんだ!)
立ち止まる生徒たちの隙間を縫って、なんとか校門までたどり着く。
しかしそこに立っていたのは高柳だった。
「……鏡哉、さん、は……?」
かくかくと人形のように口を開いた美冬に、高柳は小さくかぶりを振った。
全身の血が下へと引いていく感じがした。
その後、どうやってリムジンに乗ったのか覚えていない。
気が付くと高柳と美冬は、部屋に入っていた。
「一体、何があったの美冬ちゃん。社長はここ数日夜遅くまで残業していたと思ったら、朝いちで出社してくるし。君はこんなだし――」
「……すみません」
「美冬ちゃん?」
うつむいてしまった美冬に、高柳が片膝をついて顔を覗き込む。
その高柳の頬に、ぱたりと雫が一滴降り注いだ。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ! 私が、私が悪いんです――!」
美冬は子供の様にしゃくりあげて泣いていた。