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籠鳥 ~溺愛~
第1章
「わあ! 美味しそう! って、い、いいんですか、また頂いちゃって?」
おずおずと上目使いにそう確認してくる美冬にもちろんと頷いて見せる。
「あ、じゃあ、ベッドの中じゃなくてキチンと座ってテーブルで食べてもいいですか? せっかくこんなに綺麗で美味しそうなのに、もったいないです」
「もちろんいいけれど、歩ける?」
「だいぶマシになったので、大丈夫です」
美冬はまだ少しふらついていたが、鏡哉の手を借りて隣のダイニングに移動した。
注意してダイニングテーブルの椅子に座らせると、美冬はぽかんとした表情で瞳を瞬いていた。
「何?」
問いかけた鏡哉を下から見上げてきた美冬は、あわあわと焦ったように口を開く。
「え、えっ! っていうか、なんですか、この部屋! き、綺麗だし高級そうだし、ショールームかホテルの何かですか?」
美冬が驚くのも不思議はない。
鏡哉の部屋は美冬のような一介の女子高生からは、想像もつかないくらいの広さだった。
しかも驚いたことにメゾネットになっており、広いリビングは高い吹き抜けになっている。
「そう?」
鏡哉はなんでもなさそうにそう言うと、二人分の食事をテキパキとテーブルの上に並べた。
「そうですよ! ていうか私、こんな格好で……」
そう言って俯いた美冬の視線の先はくしゃくしゃになった白色のセーラー服の上と、紺色の襞スカートだった。
「ああ、ごめん。さすがに脱がすわけにはいかなくて。食事したらお風呂を使うといいよ。着替えも出しとくから」
鏡哉は気を使ってそういったつもりだったが、『お風呂』という単語を聞いた美冬が、顔を真っ赤にしたのに気付いた。
「お、お風呂なんてお借りできません! あ、あのこれを頂いたらすぐに帰りますから――」
(帰る――? そりゃあそうか。見ず知らずの男の家だものな。しかし何故だろう。彼女に帰って欲しくない――)
「まあ、とにかく食べよう。君貧血なんじゃないか? ホウレンソウとレバーを用意したから、しっかり食べて」
話を食事にすり替えて、鏡哉はテーブルの上の料理を説明しだす。
かなりの食いしん坊らしい美冬はその言葉にぱっと顔を明るくしてフォークをとると、興味深そうにホウレンソウのキシュをつついた。