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陽向の恋
第8章 エピローグ

 ……――そのまま仕事を終え、アパートへ帰宅する。それから私服に着替え、すぐ夕食を作っていたが、陽向があわただしく帰宅した後、不思議になりながら料理の手を止めた。

「苗ちゃん!大変だよ!」

「おかえり、どうしたの?」

「千景が!うちの会社に来るって!」

「……」

「あれ?驚かないの?」

 キッチンに立つ私へ近付いてくる陽向。リアクションしない私が不思議なのか、首を傾げながら尋ねる。そして、

「……課長から聞いて、知ってた」

「えぇー!」

 答える私へ、大袈裟に叫んだ。

「何で会社で言ってくれないの!」

「帰ったら言おうかと思って」

「もぉー!そういうとこ、苗ちゃん冷静だよね!」

 冷静というか……あまり気にしていないだけなんだけど。

「どうしよう!千景って、俺の親が離婚する前、苗ちゃんにベタベタだったよね!」

「子供の頃の話じゃん。あれから何年経ってると思うの?」

「でも……!」

「またおっぱい戦争なんて言うの?大丈夫だよ。陽向」

 心配そうにする陽向へ、私は近付いて抱き締める。

「私は陽向のものだよ」

 言っていて恥ずかしいけどな――

「苗ちゃん、言ってて恥ずかしくないの?」

「……」

 恥ずかしいってば――

 抱き締めながら陽向から聞かれ、私は無表情で黙り混んだ。陽向が抱き締め返してきて、すぐに安堵したが。

「ありがとう苗ちゃん。そうだよね。これから何があっても、苗ちゃんは俺のだし、二人で乗り越えられるよね」

「うん……」

 嬉しそうに微笑む陽向に、私も微笑み返す。

「苗ちゃん、キスしよう」

 そのまま離れて、キスしようとする。そんな陽向に、私は静かに目を閉じた。……しかし、急に部屋のインターフォンが鳴り、二人とも動きを止めた。

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