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陽向の恋
第8章 エピローグ

「……誰だろうね?」

「さあ?」

「出なくていっか!」

「ちょっと陽向!」

 二人で一瞬顔を見合わせたが、陽向が軽く口付けてきて、私は慌てる。チュッ、チュッと、唇、頬、額と何度も口付けられ、恥ずかしくなるも。続けて連打されるインターフォンに、また二人共身動きを止めた。

「ちっ、誰だよ。邪魔すんのは……」

 舌打ちして、不機嫌そうにドアへ向かって歩き出す陽向。その光景に私も少し残念になりながら、料理を再開しようとした。玄関から陽向の声が聞こえてくるまでは……。

「お前、何しに来たんだよ!」

「久々~、上がらして貰うよ~」

「おいこら!勝手に上がるなよ!」

 えっ……誰か入って来たの?!聞こえてくる会話を聞いて、私は玄関の方へ出て行こうとする。その前にリビングのドアが開いて、誰かが入ってくる。

「あ、もしかして、苗ちゃん?久しぶり~」

「千景君?」

 面影が似ていて尋ねる。と、私服に身を包んだ男の人は、笑顔で頷いた。

「うん。今度二人の会社に入社するから、挨拶に来た」

「そうなんだ……よくここが分かったね」

 間宮 千景。19歳。陽向の3才下の弟だ。陽向が中学二年生の時に両親の離婚で、陽向とは離れて住んでいた。陽向が父親、千景君が母親に引き取られたからだ。まさか再開するとは思わなかった。

「陽向とはたまに連絡してるからね。にしても……二人一緒に住んでたんだ。苗ちゃん……成長したね」

 私を見ながらしみじみと話す千景君。その視線が明らかに私の胸へ向いていて、リビングへ入ってきた陽向が怒った。

「千景!早く帰れよ!」

「良いじゃん。これからはたまに遊びに来させてよ」

「ダメだ!絶対に!というか、お前うちの会社に入社するって何で言わなかったんだよ!」

「何でって、陽向を驚かせたくて」

 怒っている陽向に動揺することなく、千景君はにやっと笑う。こういうところ、昔と変わらない。陽向をいつもからかって楽しんでいたところ……。

「苗ちゃんにも久しぶり会えて嬉しいな。綺麗になったね」

 そのまま私へニコッと爽やかに微笑む千景君。その光景に、陽向が顔を青ざめながら叫んだ。

「お、おっぱい戦争勃発だぁぁぁー!」


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