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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第5章 五週目
「何言ってるの、レンブ。あなた、その頃、こーんなちっちゃな子どもだったじゃないの。その分あなたは大きくなってから、お兄様やお父様お母様に、あちこち連れて行って貰ったじゃない」
「そうよ。私達みたいな真ん中っ子は、ほんっと損よねえ?」
「ねーえ?」
「お姉様方?私、南のお話、お聞きしたいですわ」
お姉様方とレンブ妃のお喋りの雲行きが怪しくなり、姉妹喧嘩になりそうな気配になったので、スグリ姫は慌てて話を逸らせました。

「そう?そうよね!彼の地は本当に素晴らしかったわ…ね?」
「ええ。あちらは果物の名産地でしょう?それにちょうど、あの頃は果物王子さまが話題で」
「…くだものおうじ?」
なにそれ、とスグリ姫は心の中で突っ込みました。
「そうなのよ。王子っていうのは、周りが勝手につけたお名前なのだけど」
「そうそう。二十歳になるかならないかの、少年と青年の境目くらいの年頃のお兄様でね」
「私達、偶然拝見して、すっかりファンになってしまって」
「しばらく、南に通いつめておりましたのよ」
「へえ…」
その頃、お姉様方がちょうど今のレンブ妃くらいだったのなら、スグリ姫は、お見合いが始まった頃でしょうか。

「なんでも、とても大きな果物園の跡取りの方だとかで」
(…ん?)
「果物を美味しく食べる方法とか、そういうのを教えるお仕事をされてたんだけど…今は、どうしてらっしゃるでしょうね」
「え?今はもう王子さまはいらっしゃらなくなってしまったの?」
それまで目を輝かせておとなしく聞いていた、ドラマチック大好きなレンブ妃は、そこで姉達に質問しました。

「そうなの。お仕事が代替わりされたとかで、お忙しくなって。表に出るお仕事は、お止めになってしまったそうなのよ」
(…代替わり…?)

スグリ姫はテーブルの下でひーふーみー、とここには居ない人物の年を数え、数え終えた後、おそるおそるお姉様方に聞きました。
「あのう…その…王子さまの、お名前は…」
「それが、秘密でしたのよ」
「「ひみつぅう???」」
レンブ妃とスグリ姫の驚きの声が、お姉様方のユニゾン張りにハモりました。

「ええ。本名は内緒の王子さま…ミステリアスですわよね?!」
「ええ。『主役は果物なので』っておっしゃって…ミステリアスでしたわよね!?」
お姉様方は声を揃えて、「ドラマチック!」…ではなく、「ミステリアス!」と言いました。
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