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降っても照っても曇っても(くすくす姫後日談・その4.5)
第3章 降っても、照っても、曇っても
「ええ。バンシルに、今朝聞いたわ」
バンシルが同行するとサクナに聞いたスグリ姫は、こくんと頷きました。

「実は、今は屋敷に女手が無え」
「え?」
サクナは不機嫌そうに眉を顰めて言いました。

「色々有って、今屋敷で働いてるのは男だけだ。果樹園は、そうじゃねぇんだが…そこにお前が入るってのは、いろいろ不便だろ」
「そうね…」
男性ばかりでも家の中の諸々を担う使用人はきちんと揃っているのでしょうが、屋敷の中に女性が姫だけというのは、何かと困ることが有りそうです。

「それで、新しく人を雇う為に、バンシルに手伝って貰うことにした」
「バンシルに、わざわざ?」
「お前の為に雇う奴の人選と教育だ。お前のことを良く知ってる人間に任せるのが一番だろ」
「それは…そうかもしれないけど、」
バンシルが同行してくれることになった理由がそんな大仕事の為だとは、姫は思ってもみませんでした。

「なんだか、バンシルに悪いわ…」
「そうだな。お前とのことでは最初から、バンシルに世話になりっぱなしだ」
サクナはバンシルに助けられた「最初」のことを思い出したのか、ふっと笑って姫の髪に口づけました。

「実は、大臣様に女手を雇うのにバンシルに手伝って貰っちゃどうかと言われて現状を話したら、バンシルはその場で怒り狂ったんだぞ」
「え?」
「そんなところに大事な姫様を連れて行くなんて許しません、私に任せて下さらないなら今からでも結婚に断固反対致します、ってな」
「バンシルが…」
サクナとのことをからかいこそすれ一度も反対などしなかったバンシルが、自分の為にそこまで怒ったと知って、姫は目の奥が熱くなりました。

「勿論こちらから三顧の礼で頼みたいと平身低頭して伝えたら、あんたじゃなくて姫様の為に徹底的にやらせて頂きます、とおっそろしい目で睨まれたぞ」
「バンシルったら…」
姫がくすりと笑ったのを見て、サクナも薄く微笑んで、姫の頭を撫でました。

「でも、女手が無いって、なんだか意外だわ」
姫が撫でられながらそう呟くと、サクナは気まずそうに答えました。
「まあ、普通は無ぇよな。男ばっかりの屋敷なんて」
「と言うか…誰かに言われて私の盛装を持ってきたって言ってたでしょ?だから女の人もお屋敷に居ると思ってたの」
姫は、この前一度着て汚してしまって仕舞い込まれた、南の女性の盛装の衣装を思い出してそう言いました。
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