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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「後継に決まって学校に行き始めて初めて、自分の普通は普通では無いのだと知りました。自分と同じ物を見られる奴、その事について語れる奴は、周りには居ませんでした。その頃、先代に言われたのです。お前は果物に愛されている人間だ、そんな人間は滅多に居ない、と。それを聞いて俺は思いました。俺は俺が必要とする物の為にではなく、俺を必要とする物の為に生かされているのだとーーその為に、この家に来たのだと」

サクナの話を聞いていた姫は、握っていた手に思わず力を込めました。
今まで見せてくれた色々な事を、サクナは「普通」と言いました。けれど、周りは「神業」と言いました。それは尊敬の念からの言葉ではありましたが、相手との間にはっきり線を引く言葉でも有ったのです。
今のサクナは立派な大人で、この果物園の当主です。普通が普通で無い事も、当然の事として流せるでしょう。しかし、子どもの頃にそれを初めて知った時、幼いサクナはどんな気持ちになったでしょう。
そんな事を考えてしまって泣きそうになった姫は、そっと顔を伏せました。
サクナの話は、続きました。

「俺は拾われた身です。この家の為、果物の為に生きる事に、不満や反発は感じませんでした。自分の為に何かを望む事も、特に有りませんでした。先代だって似たような生き方をして来たのを、俺は一番近くで見て来た。それもまた特別な事ではなく、この家の主として当然の事だと思っていましたーーけれど」
姫が先程手を握ったのに応えるように、サクナが姫の手を握りました。

「たった一つだけ、どうしても欲しいものが出来ました。そんなことが起こるとは、夢にも思っちゃなかったってのに」
姫はその言葉に弾かれるように顔を上げて、サクナを見ました。サクナは姫の方を見て、驚くほど柔らかく微笑んでいました。

「…勝手をしたのは分かっています。ご迷惑でも有ったでしょう。しかし、もし許されるなら、たった一つだけ望んだものとーーこいつと一緒に、生きてみたいと思いました」
サクナは領主に向き直って、領主の目を見て言いました。

「結婚を認めて頂き、有り難う御座います。どんな想いで認めて下さったのかは、俺には分かりません。結果的には家の益になると踏んだから認められたんでしょう。理由はどうあれ、認めて頂けた。それだけで、十分です」
サクナの言葉に黙って耳を傾けていた領主が、そこで口を開きました。
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