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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第13章 柊屋敷の嫁御様
「その話が落着した後、ローゼルには、ビスカスの所に行って貰った」
サクナは椅子の上に座り直し、少し固い表情になって、姫に告げ始めました。

「ローゼルが席を外した後、領主様とローゼルの兄貴達と話した。詳しい経緯を聞いたりするのはビスカスの目が覚めてからになるから、とりあえず今日の所は、という話をした」
サクナはそこでお茶のカップに手を伸ばし、残っていたお茶を飲み干しました。

「領主様も上の兄貴も、平謝りだった。お前に直接謝罪したいと言っていたが、今日の所は、控えて貰った。もしお前が望む様なら、後日改めて出掛けて来て貰う事にした…それで良かったか?」
「ええ」
スグリ姫は、領主様や若奥様の夫であるローゼルの長兄に謝罪して欲しいとは、全く思っておりませんでした。しかし、それはビスカスの目が覚めてからまた話し合えば良いと思い、今日の所は頷いておく事にしました。

「今回は結果的には、お前が髪を切られた以外は、傷付けた側も傷付けられた側も、領主様の家の中の人間だ。内々の問題が出先で起こっただけだと言えなくも無い。それに、家の奥でお前があんな目に遭った事では、俺にも反省すべき点が有る」
「どうして?」
「廊下の色が変わってた所を、憶えてるか?あそこはちょっとした仕掛けが有る場所だ。…それに付いては長くなるから、日を改めて説明させてくれ」
「ええ、分かったわ」
「今日の件に関しては、大事にせずに手打ちにする事にした。お前を助けて自分は怪我をしたビスカス自身が、事を荒立てる事を望んで無いからだ。但し、二度と似たような事が起こらぬ様に、領主様には原因を調べてきちんと対処して、詳細を報告して頂く事を要求した。普段大人しい人間が、突然あんな事を仕出かすのは不自然だ。何か、理由が有る筈だ。それを調べて貰う。以上が今日話し合ったおおよその内容だ。…分かったか?」
「ええ。私の為に色々考えてくれて、ありがとう」
姫はサクナに微笑みましたが、サクナの顔は曇っていました。

「…今日の話し合いに付いては、その位だ。…だが、それと関係した事では有るが別件で、お前に話して置きたい事がある」
「…別件で、話して置きたい事?」
「ああ。それを聞いた上で、お前が必要だと思った時は、」

そこで一旦言葉を止めたサクナが言ったその先を聞いて、姫は血の気が引きました。


「俺との婚約を、破棄してくれ」
 
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