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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第3章 古傷と爪痕
「うう…それも、ごめんなさい…穴があったら、入りたい…」
「そこは、『穴があるから入れてください』だろ」
サクナは寝台に寝そべって、布団から覗いている姫の目を覗き込みました。

「さっきはお前より先にイっちまうかと思ったぞ。お前は時々強情だよな」
そう言うと、布団の中に両手を突っ込んで、姫の頬っぺに触れました。
「…我が侭?図々しいだと?」
頬っぺをむにょっと伸ばされながら、姫は、ほへんははい、と謝りました。

「お前の我が侭や図々しいのが嬉しい俺は変か?」
「ぶぇ?」
一旦ぷにゅっと潰されて、もう一度ふにゅっと伸ばされました。

「ミミズ腫れが嬉しい俺は変か?」
「ふぉれは…ふほひ、ふぇん?」
「馬鹿め」
サクナは遊んでいた姫の頬っぺから手を離すと、布団の上をぽかっと拳で叩きました。
「お前が俺を自分の男だって思ってるって体でも言葉でもはっきり認めやがったのが、クソ嬉しいっつってんだよ」
「ふぇ?」
姫は伸び縮みされていた頬っぺを両手でもそもそ擦ってまともに喋れるようになってから、サクナに尋ねました。

「…嬉しい、の?」
「嬉しいだろ。そんなに惚れられてるなんて、男冥利に尽きるぞ」
「だけど…ほっ、他の人はサクナに触らないでとかっ、心が狭い…」
「じゃあ、例えば、逆を考えてみろ。俺がお前に、他の男に触…」
サクナはそこまで言いかけたところで、突然目を覆って天井を仰ぎました。
「…悪い。今のは忘れろ、最悪の例だ。自分で言って想像しただけでそいつを殴りたくなった」

「でも…私と違って、御当主だもの。ひとりじめするなんて、自分勝手なお嫁さんって言われちゃう…」
「それを言うなら、都のお姫様を自分の都合でこんな田舎に掻っ攫おうとしてる一平民のが、世間的に見てよっぽど勝手で非常識だろうが」
「そんな…」
「それに、相手を自分勝手に独り占めしてる奴が『私は良いからお仕事行って』なんて言うか?」
サクナは布団に籠もり続ける小山を、ぽんぽんと叩きました。
「お前の独り占めは、遠慮しすぎだ。いつもとは言わねぇが、二人の時くらい、さっきみてぇにもっとお前の好きなように好きなだけ独り占めしてみろ。誰も困らねぇ、むしろ俺が喜ぶ」
「うー…」
「他に、まだ何かあんのか?」

スグリ姫は、いろんな事を考え過ぎて切な過ぎて苦しくなって、くすん、と鼻を鳴らしました。
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