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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第6章 敬語と命令
色々なことがあった、姫のこの屋敷での二日目が、終わろうとしておりました。
スグリ姫は午前中の騒ぎの後、予定通り昨日聞けなかった話を聞きました。
途中で昼食を取って、午後も話を聞いたりお茶を飲んだり予定を立てたりして過ごし、夕方にはクロウの提案でバンシルと外に出て夕日を見たりも致しました。

朝の騒動の為かどうかは分かりませんが、サクナの仕事は結局長引き、夕食も来客と共にするということになりました。隣の部屋から物音がしたのは、姫が寝支度をした後でした。
帰って来た、と思った姫が部屋の間の扉に駆け寄ると、コンコン、と向こう側から扉を叩く音がしました。

「…はい?」
「夜這いに来た。開けてくれ」
くすくす笑いながら姫が扉を開けると、やはり寝支度をしたサクナが立っていました。
「音がしたから、私も行こうかと思ってた」
「そしたらお前は三回目の夜這いか?」
扉を閉めて姫の部屋に入ったサクナに抱きついて、姫は唇を尖らせました。

「昨日もこっちで寝たわよね?サクナのお部屋でも眠ってみたいわ」
「俺はこっちのが落ち着くんだよ…また今度な」
調度が城と似ている為か、まだ到着してから二日しか経っていないのに、こちらの部屋は自然と姫の気配がする場所になっておりました。以前と変わらぬ自分の部屋に居るよりも、サクナにとってはこちらの部屋に居る方が、ずっと落ち着き、安らぐ様に感じられました。

「もっと早く戻れる筈だったんだが、話が伸びた。済まなかったな」
「ううん。やること一杯有ったから、ちょうど良かったわ」
「何してたんだ?」
サクナは姫を抱きしめて髪に頬擦りしながら、姫の話を聞きました。
「今日は、バンシルにしなきゃいけないことの話を聞いて、お昼ご飯を頂いて、厨房に行って」
「厨房?」
「お昼ご飯に見たことない野菜が出たから、見せてもらいに行ったの。前言ってたけど、ほんとに男の人ばっかりなのね」
男ばかりの厨房どころか使用人は全部男、という状態になったのは理由があってのことでしたが、男ばかりの厨房に行ったという姫の言葉を聞いたサクナは、その状態を今日まで放って置いた自分を呪いました。

「そうか。厨房で変わったことは無かったか?」
「大丈夫よ、楽しかったわ。皆さんすごーく親切に、色々教えてくださったの」
その親切は俺にとっちゃ大丈夫じゃねぇんだよと、サクナは心の中で舌打ちしました。
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