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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第8章 木柵とリンゴ
「…突拍子もないって、例えば知らない間に外に出て誰かと仲良くなって、柵を直すとか?」
「そうだな。柵を直すとか、スイカの木を探すとか」
「探さないから! スイカがなるのは木じゃないって、もう知ってるもの! 」
「探してもいいぞ」
「へ?」
「お前が本当にやりてぇと思ったら、どうせ止めてもやるんだろ。出来るだけ止めねえ。手伝えることがありゃあ手伝う。しくじって泣いて帰ってきたら、頭撫でてやる」
そう言ってサクナは姫の頭をよしよしと撫でました。

「こんなとこまで連れて来ちまったんだから、これ以上の苦労はさせたくねえと思う余り、お前を庇い過ぎてたかも知れねえ」
姫の頬を両手で包むようにして目を合わせ、サクナは姫に言いました。

「半人前扱いみてぇなことして、悪かった」
「サクナ…」
姫はサクナの言葉で、どんよりしていた自分の気持ちが、しゅわしゅわとシャンパンの泡のように体から抜けて行った気がしました。
春からも暇かもしれないのは、何も変わっていないのです。
それでも、一番分かって欲しかった人に、自分の気持ちが少し分かると言ってもらえたというだけで、姫はすうっと落ち着きました。

「言っとくが、明らかに向いて無えことやなんかには、意見はするぞ」
「…面接とか?」
「そうだな、面接とかな。あとは誰かの孫の嫁とかな」
サクナは繋いでいる手を持ち上げて、指輪に口づけました。
「誰がなんと言おうが、お前がこの世で一番向いてる仕事は俺の嫁なのは譲れねえ」
「…向いてないって言われても、そのお仕事には絶対就くわ」
姫もサクナの真似をして繋いでいる手を持ち上げて、まだ仄かにリンゴの香る指先に口づけました。
「私じゃ相応しくなかったとしても、他の誰にも譲らないって、決めたんだもの」
「安心しろ。お前が相応しく無ぇんなら、俺も相応しく無ぇって事だ」
サクナは姫の手を引いて歩き始めました。

「…今日の夕飯は、リンゴで仕舞いだ」
「え?」
「リンゴで腹一杯だ。あと食えそうなのはスグリだけだな」
「…」
スグリ姫はサクナの軽口に答えようとしましたが、口から言葉が出ませんでした。姫もまた、夕食よりも欲しいものが有ったのです。
言葉の代わりに、姫はきゅっとサクナの手を握りました。

「…家に帰るぞ」
手を繋ぎ、一番高い木の天辺より少し落ちた夕陽に照らされながら、二人は一緒に家路についたのでした。
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