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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日
…あーあ。
飲んじゃったよ。それも一息に。

「お嬢様?」
「何よ。」
「余所のお宅ですし、お祝いの席ですし…飲み過ぎるのは、如何な物かと」
それにお嬢様にゃあ、熱有るんじゃねえか疑惑も有るしね。

「そんな事は分かっているわ。私が飲み過ぎたりする訳が無いじゃない」
「失礼致しました。出過ぎた事を申しました」
とかなんとか言っといたけど、よく言うよなあ、お嬢様。言ってる事とやってる事が、違ってますぜ?

「まあ、飲み過ぎ云々はひとまず置いておくとして、お嬢様が前座扱いされる訳など、有りますでしょうか?お嬢様は何時如何なる時で有ろうとも、常に主役でいらっしゃいますよ」
嘘じゃ無ぇですよ?
俺から見りゃあ、常にお嬢様が世界の主役だ。
「何よ。見てた癖に」
お嬢様がまたご自分でどっぼどぼ注ごうとなさったので、シロップ水のグラスを無理矢理お嬢様の目の前に置いた。キッと睨まれたが、お嬢様は熱がお有りになるかも知れねーからな。この際怯んじゃ居られねえ、健康第一だからねー。なもんで俺も、じろっと睨み返してやった。

「見てたでしょ。私が振られたの」
お嬢様は根負けしたのか、酒のグラスを渋々手放して、シロップ水のグラスを手に取った。良し良し。そして、愚痴った。
「あれは、余興で御座いますでしょ。初めっからそういう風に決ってる物ですからね。致し方御座いませんよ」
「ふんっ。決まりだからって、私を振った後にあーんなに嬉しそうにスグリ様とベッタベタなさらなくたって…あら、これ美味しいわね」

お嬢様の顔がふっと緩んだ隙に、次のシロップ水のグラスを、さり気なく押し付けた。
「ベタベタなさるのは、当然です。そうじゃなきゃ余興になりませんよ」
それに、ありゃあ人前で許嫁とベッタベタ出来る、数少ねえ機会だからねー。睦まじさを見せ付けて他の奴らを寄せ付けねー様にするってなぁ、お約束みてぇなもんだからな。
「…私が振られるって分かってる癖に、お前も加担しちゃって」
「サクナ様に、頼まれましたからね」
俺ばっかり責めてますが、お嬢様だってそうですよね?
そう言わねーうちに、お嬢様がぶつくさ言った。

「お前は、良いの?」
「何がですか?」
「私がサクナ様に言い寄られて、なのに最後にはあっさり振られてしまっても良いのかって、聞いてるのよ」
良くは無え。そりゃー、良くは無ぇですよ?
でも、ありゃあ余興だ。
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