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私怨の宴 背徳の凌辱
第4章 美貌の妻までもが、悪魔の魔手に…
根岸恭平は無論、決死の覚悟だ。拉致監禁、そして穢され、今も生命の危機に瀕しているであろう愛娘の美空に続き、最愛の妻を悪魔に接近させるのだ。しかし、恭平はあえて警察組織を頼らなかった。己のために、組織は裏切れない、そんなデカのサガは無論あった。しかし、組対五課が絡めば、麻薬取り締まりが優先され、おのずと人質の生命は後回しにされかねない。ましてや相手はただの誘拐犯ではない。強姦凌辱に手馴れ、それを愉しみ、殺人のプロでもある李愛臣と、その一門『狂虎』が相手なのだ。まさに捨て身の覚悟、己の命とは引き換えに自らの手で娘の命だけは救い出す。そんな悲壮な決意のもと、当然のように協力者となってくれた妻の勇気に感謝しつつ、街角の通行人を装い、志桜里が身を潜める敵の交渉人との待合場所でもあるワンボックスカーを見つめた。

「志桜里…想えば、君も不思議な女だな」
恭平は、心の中で妻に語り掛ける。不惑を迎えたバツイチの自分が、まだ20代の若い美人弁護士だった彼女と巡り合い、まるで少年の様に心奪われ、結婚まで出来たのは奇跡に近い出来事だったと思う。いい年をした男だが、志桜里の過去の男性経験や交際歴など関心がないといえばウソになる。
『過去には忘れられない人もいたわ。でも、あなたに出会ってからは、その恋を封印しているの』
自分のプロポーズを受諾したときの、妻の言葉は今も彼の胸に焼き付いて離れなかった。

時計のデジタル表示が、日を跨いだ頃、志桜里は血の気をなくしてもまだなお、蠱惑的な唇を噛み締めた。根岸たちもある作戦を打っていた。
「石岡さん、まだ現れないわ…。李は…本当に来るのかしら?」
ワンボックスカーの後部座席に覆いかぶさった毛布の下には、武装した石岡が身を潜めている。石岡はその長い警察のキャリアと、興信所での鋭い勘と経験に基づき、二人をアドバイスしてくれた。
『李も麻薬交渉が間近となり切羽詰まって情報を欲しがっている。ただでこっちが情報を渡す筈がねえことは向こうも承知している。交渉場所では必ず美空ちゃんの無事な姿をみせつけてくるはずだ。俺たちの目的は、犯人逮捕じゃあねえ、たとえ命のやり取りをしても、あの娘を助け出すことだ…わかるよな?』
石岡の言葉には重みがあった。
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