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感情のない世界 // 更新される景色
第2章 は
君がいない間、僕が何をしていたのか
それを事細かに話して、共有して、忘れる。
僕にとって君がいない景色は優先度が低いから、デリートの対象となるほとんどが、僕ひとりの " 記憶 " だった。
けれど少しだけ、君から選ぶ時もある。
「ほら、あれは? 先週、この家にお父様が来たでしょう?」
「そうだね」
「お父様があなたに酷いことを言ったじゃない。心無いことをよ」
「確かにあの時の君は怒った顔をしていたね」
「当然」
「どこからどこまでを消すんだい?」
「全部よ。あの日のことは全部、忘れて」
「…わかった」
それは君にとって嫌な記憶で
君が忘れたくても忘れられない記憶で
…君を不快にさせる記憶は、僕にとっても不快に違いない。きっとそうだから
「今すぐ、忘れるよ」
迷うことなく消去した。