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心の隙間を埋めて
第6章 日常

 その日の昼の休憩は長いようで短かった。

 彼女の名残りを確認しようとバックミラーで自分の口元を覗く。

 口紅はついてないようだったが、俺の口の周りに彼女の粘りがテカテカとあった。制服のポケットからハンカチを取り出してそこを丹念に拭った。

 鼻を啜る。彼女の甘酸っぱさと俺の青臭い臭いが混じっているような気がして、窓を全開にしてバスを走らせた。




 家に着く前に駅のトイレでもう一度口の周りをチェックする。コンビニに駆け込んで買ったミラーとウエットティッシュで……。

「ただいま……」

 その日、俺は早く家に着いた。

 小さな娘を抱いた妻が出迎えてくれた。


 いつものように……。


 セックスじゃなくてオナニー……。


 彼女とのあの行為は……。

 二人でオナニーしていた、

 と言おう。

 と、俺は抱っこしてくれと手を伸ばす娘を抱きながら、自分自身に言い聞かせる。


 何と自分勝手なヤツだ。


 俺は……。
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