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愛おしいキミに極甘な林檎を
第58章 初恋の人



ドアの前まで足を進ませた時、課長に呼ばれて止まってくるりと振り向く。


「なんでしょうか?」


仕事の話かと思って肩にかけたバッグの紐を握って行儀よく話されることを待つ。


その話はすぐにされなくて、目が合ってから少し沈黙の間ができた。


「あの……、課長……?」


どうしたのかと思って課長の方へ距離を縮めてみると、少し瞳が潤んでいるように見えた。






「結婚式……、乙羽の上司として、塑羅緒くんの友人として楽しみにしている」


静かに言われた祝福の言葉。


それを聞いた後、なんともなかった目が急に熱くなって私まで涙が滲んできた。



「……ありがとうございます」


でもその涙を見せないようにして、私は笑顔で答えてから課長の前から立ち去った。



欲しかった言葉をやっともらうことができたのに、どうしてこんなにも胸が締めつけられるんだろう……。


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