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愛おしいキミに極甘な林檎を
第58章 初恋の人



つらいのは私ではなくて、郁哉さんの方なのに……。


いつまで経っても振るのは苦手だ。


どんな方法を取ったとしても相手を傷つけてしまうから。


……どうせだったら郁哉さんに振られたかった。




幸い迎えに来てくれたソラ先輩と会った頃には潤んでいた瞳が元に戻っていた。


「どうしたの?」っと聞かれないから、私はいつも通りにも振る舞えているようだ。



歩いている時に、これで良かったと身体で感じたくてソラ先輩と手を繋ぐ。


すると、やんわりとした笑みを浮かべられて、離れないようにしっかりと繋いだ手をコートのポケットに入れて温めてくれる。


その体温は、郁哉さんに出した答えが間違っていないと分かるほど心地よくて優しいものだった。


私はこの人のことが一番好き……――――




自宅に帰って晩御飯を食べた後、冷蔵庫で冷やしておいたバレンタインチョコをソラ先輩に差し出す。


「ソラ先輩、ハッピーバレンタイン」


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