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愛おしいキミに極甘な林檎を
第60章 夢見ていたシアワセの未来

* * *
「ひゃああ!?」
「うるさい!静かにしなさい!」
あれは何歳の時だったかは詳しく覚えていないけど小学生の時だった。
時より母に注意されながらも台所でひとりでバレンタインデーに渡すチョコを作っていた。
材料を買うお金がないから作るというよりも、ハート型のチョコに文字を書くだけ。
どうしても自分が作った物を渡したくて、封を開けてチョコペンでメッセージを書くことにした。
【ハッピーバレンタイン】の次に男の子の名前を書くつもりだけど渡すことを考えると緊張してしまう。
結局失敗して最初の文字を大きく書いてしまって、名前の三文字目の“お”が入らなかった。
恥ずかしがりながらも、なんとかそのチョコレートを男の子に渡せた。
渡せたのは一緒にいてくれた父が私の背中を押してくれたおかげでもあった。
でもその男の子と会うのはこれが最後。
私が少し遠くへ引っ越すからだ。
会うと宿題を教えてくれたり、遊んでくれていた大切な男の子。
もう会えないと思うと寂しくなったから、私は帰ろうとしている父を無視して雪が降り続いている外に逃げ出した。

