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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……

抱きしめられていて顔は見えない。でも指先からそれが伝わってくる。
ソラ先輩の本音は分からないけど退院してきてから毎日傍にいてくれたから少しの違いを感じ取ることはできた。
もっと思っていることが分かればいいのに……。
すぐにその答えを教えてもらえないまましばらく抱きしめられていた。
何の役にも立っていなくて空っぽの私でも必要としてくれているように強く求めてくる。
まるで“ここにいていい”と言ってくれているように……。
触れていた体をそっと放されてソラ先輩の今の表情がやっと見えた。
目が合うと微笑んでくるから険しさは消えているものの切なそうな瞳をしているのは変わらない。
「心配そうな顔をしなくても大丈夫だよ。このくらい全然悲しくないから」
「でも……」
「少し驚いただけだよ。……だけど、もし、幸せを願って信頼できる人に愛する人を託していたら今頃本当に悲しかったんだろうね」
「えっ……」

