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愛おしいキミに極甘な林檎を
第31章 未来への誓い


その那砂さんと別れて理人さんの車に乗せてもらい、街へと向かう。


雨に打たれた上に泣き疲れた幼い二人は車の後部座席に乗るとすぐに眠ってしまった。


車内が静かになった頃、理人さんは口を開く。



「風子さん、今日はご迷惑を掛けてすみませんでした」


「二人が見つかって良かったです。それにしても祖父の家にはたくさん花が咲いているのにその花ではなくて桜を求めてここに来るなんて驚きですね」


「弟の方は桜の花が強く記憶に残っているのかもしれません」



まだ止むことのない雨。

赤信号を見ながら車のハンドルを握っている理人さんの横顔はどこか切なそうに見えた。



「記憶ですか……。なにかいい思い出があったとか?」



「いえ、もしかしたら悪い方かもしれません。五年前の春、僕らの住んでいた家が火事になりましてね。
助かったのは僕と弟と妹だけだったんです。

その火事で両親も亡くなり、家も全焼したので他に何も残りませんでした。

でも家の近くに立っていた桜の木だけは燃えずに残っていたんです」


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