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私の欠けているところ
第2章 『はじまり』に変わったのは

「私ね」


「はい」


「梶谷くん何か悩みがあって
相談したいとか
そういうことなのかなーと
思ってたの」


「あー…すみません。
今のところは大丈夫です。
けど何かあったら
よろしくお願いします」


「私じゃ何も
解決できないかもしれないけど」


「もしそうだとしても
聞いてもらうだけできっと救われます。
それに俺、深海さんと話しやすいし」


「そう?」


「はい」


「じゃあ…聞くだけなら。
でも悩みが無いなら
とりあえず安心した。
ホッとしたらお腹空いてきちゃった(笑)
それにしても久しぶりだな…」


「え?焼き鳥?」


「ううん、私ね
付き合ってる人以外の男の人と
二人で食事するの
久しぶり」


「あっ…」


俺はなんで今まで気がつかなかったんだ!

そーだよ
深海さんは恋人がいて
いくら同じ会社とはいえ
男と二人で食事とか
マズイんじゃ…


「わ、す、すみません!
俺、うっかりしてました。
彼氏に怒られたりしますよね?!
わーほんと
相談があるわけでもないのに
強引に誘ってすみません!」


一瞬のうちに
逆の立場だったらと考えたんだ

もし深海さんが俺の女だったとして
すごく年下の男と二人きりで食事…
だめだ
たとえ同僚だとしても
モヤモヤが止まらない

場合によっては
浮気を疑われる場面だ
こんなことで
深海さんが疑われたら…

心配になって
少し俯く深海さんの顔を
のぞき込むと

「怒ったりは…しない」

深海さんはそう言って
チラッと
まだ一度も鳴っていない
携帯に視線を合わせた


「付き合ってる人…いたんですね」


知ってるよ
ほんとは全部見てたんだ、俺








「………うん」


その時
深海さんの返事が遅かったのは
照れ隠しなんかじゃない
もっと別の
深い意味があるような気がした
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