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私の欠けているところ
第3章 『あいつ』のせいじゃなくて


カフェから移動した先は
小さな店で
カジュアルなイタリア料理を出す
俺がよく行く店だった


その店は
狭いカウンターと
テーブル席が三つあるだけの
小さな店

客層は
常連さんがほとんどなんだ


「深海さん、ビール?」

「梶谷くんは?」

「俺はビールだけど…
深海さんもしかして
ビールあんまり好きじゃない?
焼き鳥屋で
ビールあんまり飲んでなかったけど」

「あ…飲めない訳じゃないんだけど」

「なんだ、好きなもの飲んでいいのに。
無理しないでいいし
気を使わないで下さい。
俺と同じにしなくたって全然いい。
深海さんが何を好きなのか
俺、知りたいし」

「あ、うん…ごめんね。
じゃあ…ワインにしようかな。
赤ワインをグラスで」

あ…また受け流された
俺の『知りたい』ってアピール

ま、いいか
あんまりアピールし過ぎると
せっかく縮まった距離が
離れそうだ

「ワイン、カッコいい」

「炭酸が苦手なだけ」

「そこは可愛い」

「からかわないで」

「失礼だったらすみません。
けどほんとなんで」

「…もう…」


どうやら「もう」って言うのは
口癖らしい

しかもそれを言う時は
大抵照れ隠しの時で
それがまた
いい感じだった


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