この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
私の欠けているところ
第4章 俺のついた『嘘』のおかげだったんだけど
「しんどい?」
「ううん」
「もう切った方がいい?」
「…ううん
もう少し平気」
深海さんの声は
どう考えてもしんどそうだった
けど
電話を
切りたくは無さそうで
俺は深海さんに合わせて
ゆっくりと話を続けた
「貧血だって、矢部さんが」
「そうなの。
だから本当に大丈夫。
ちょっと
仕事立て込んでたから
いい加減な食生活
してたかも…」
「時ちゃん
一人暮らし?」
「うん」
「誰か
来てくれたりしてる?
ご飯、どうしてんの?」
「大丈夫。
ゆっくり歩けば
何でも買いに行けるから」
「そんな…
貧血なら尚更
ちゃんと食べないと」
「うん、わかってる。
ちゃんと食べてるよ」
「ほんとに?
彼氏とか来てくれてる?」
「…うん」
ほんとかよ…
「いつ来た?
昨日?今朝?」
「あの…仕事だから…」
予想通り
アイツはやっぱり
来てないみたいだった
「時ちゃん」
「ん?」
「俺には
強がったりしないでくれよ」
「……」
「強がる相手が増えたって
いいことないだろ…」
「……」
「強がったあとで
この電話切ったらさ
悲しいだけだろ?」
「……うん」
「そしたら
俺のいる意味ねぇし…」
「……ん…」
「俺も強がったりしないで
辛い時は辛いって言うし
助けて欲しい時は
助けてくれって言うから」
「…うん…
ごめん…」
その時
深海さんの声が
少し
震えてるような気がした
「あ~…ごめん
ちょっと言い過ぎた
怒ってるわけじゃないんだ
ほんとに
ただ
時ちゃんに
甘えて欲しいだけ
友達に……なったんだから」
俺は
その言葉を口にした瞬間
なぜか泣きそうになっていた
ほんとは
今すぐにでも
時ちゃんの側に行って
抱きしめたいと思ってたからだ
友達なんかじゃなく
できれば
恋人として