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私の欠けているところ
第6章 苦しくて…苦しくて…

「うわっ、あっつ!」


部屋に入ると
空気のこもった部屋は暑く
俺は急いでエアコンをつけ
それから扇風機を回した

「涼しくなるまで当たってて
俺、着替えてくる」

「うん」

部屋着に着替えを済ませて戻ると
時ちゃんは
よほど暑いのか
扇風機の前に座り込んで
風に当たっていた


あの時と同じ
横顔

俺の大好きな横顔だ


その唇に
何度妄想でキスしたか分からない

その小さなピアスのついた耳を
何度口に含んだか
分からない

俺は
何度も何度も
時ちゃんを
夢で抱いていた


「あ、梶谷くん」

「な、なに?」

「昨日はごめんね?」

「あーいいよ。
今日でも良かったんだし。
なんか用あった?」

「うん。
亮ちゃんと会ってた」


亮ちゃんというのは
アイツのことだ

時ちゃんは
アイツのことを
亮ちゃんと呼んでて
アイツも俺よりは歳上だが
時ちゃんより年下らしい


「そっか。
楽しかった?」


「うん」


そう言って
時ちゃんは
軽く耳を触った

はっきりと
聞いたことはないが
耳を触るのは
照れ隠しのことが多い


「そんなスピードで飲んで大丈夫?」


「平気平気」


だから多分
昨日時ちゃんは
アイツと寝たんだ

そう思うと
俺は何とも言えない気持ちになって
いつもよりも早いスピードで
ビールを飲んでいた


「昨日はデート?」


「ううん
家で会っただけ」


時ちゃんは
炭酸の弱い酎ハイを
飲みながら
まだ暑いのか
髪を耳にかけていた

短い袖

薄くて
風に揺れるワンピース

細い…指


「彼氏のどんなとこ好きなの?」


「え?」


俺も
時ちゃんに
触りたい


「時ちゃんは
どんなとこ好きなのかなーって」


キスしたい


「あー…優しいとこ」


「どう優しいの」


ペロチューしたい


「大きい声出したりしないし
怒ったりしない

否定しない」


「否定?」


「うん。
私のどんなとこも
否定しない」


俺だってしないけどな!!



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