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第1章 抱かれる女
あれ以来、涼は私の隣の席に座らなくなった。お互いの気まずさは払拭されないまま数週間が過ぎた。それでもふと目が合うときがあるけれど、そんなときは涼から視線をそらす。


「知ってる?2組の司くん、4組の高杉さんと付き合ってるんですって」

学校で誰かが噂していた。

…高杉 笑って この間の子だ。

私の胸がチリチリと音を立てた。小牧さんの時もそうだったけれど、今度は痛みが強い気がした。

「高杉さんって、女子には人気あるけど男子にはあんまり…な子だよね」

「そうそう。いつも取り巻き連れてさ」

「ボスっぽいよね」


暫くしてから、笑は、私と涼と同じ塾に通うようになった。

ふたりは当たり前のように隣の席に座り、静かな涼に対して、笑はいつも何かを話している。

「こらっ!高杉。私語禁止っ!」

…ほら…叱られた。

講師に注意されるとすみませぇんと謝った。兎に角、涼にべったりなので、他の塾生も呆れていた。

「白井さん。この間まで司くんと仲良かったけど良いの?」

「うん。ただの友達だったし…」

「受験前でみんな必死なのに、なんだか司くんのことが、気の毒になっちゃった」

…私には関係ないし。


一部から顰蹙を買いながらも、笑が塾に通い始めて2カ月が過ぎた。その頃から涼は時々塾を休む様になった。

その日も涼は塾に来ておらず、私は気にも留めていなかったけれど、宿題で分からないところがあったので職員室へと寄った。

そこには、涼と涼の母親が来ていた。






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