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第3章 はみ出した口紅
「取り敢えず、これを読んで考えてからもう一度来てくれる?じゃぁこれ…交通費」

男の人は契約書を大きな封筒に入れると、財布から、1万円を取り出しくれた。

「じゃ今日はお疲れ様」

…えっと。

「帰って良いよ」

「は…はい」

男の人が椅子から立ち上がったので、私も慌ててソファから立ち上がった。

「化粧…あんまりしない方が良いな」

ドアへと歩きかけて私に向かって男の人は言った。

「口紅…赤すぎるし、はみ出てる」

私は慌てて鞄からティッシュを取り出すと唇を強く擦った。

「そう言うことも、勉強するから…心配は要らない」

恥ずかしくなって少し俯いた私に向かって静かに言った。

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