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炎の王妃~月明かりに染まる蝶~
第9章 夢でも
 この女官はもうかれこれ一刻余りにも渡って、大妃のその気まぐれに付き合わされていた。爪の染め直しを既に三度やらされている。



 女官の周囲には、花の染料を水溶きした白磁の器やら、爪先を美しく染め上げるための小さな筆やらの道具が一式並んでいた。






 女官はひそかに思った。大妃のたおやかな白い手は到底、四十近い女性のものとは思えない。水仕事一つしたことのない貴人であるからこそ、このような手でいられる。
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