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炎の王妃~月明かりに染まる蝶~
第9章 夢でも
 つい先刻まではあれほど爪染めに拘っていたというのに、もう関心をなくしたようである。あまりの気まぐれに最早、呆れるしかない。女官はそれでも最後まで気を抜かず、恭しく頭を垂れ、爪染めの道具を手早く纏め、これ幸いとばかりに御前を下がった。




「中宮殿の楊尚宮がまかり越しております」





 来訪者は分かり切っているのだが、いちいち大声で扉外の女官が伝える。それが宮中のしきたりであるからだ。
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