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炎の王妃~月明かりに染まる蝶~
第12章 第三話 【恋心】
☆ ~スン、私、あなたを好きになりすぎてしまったみたい~
側室最高位にまで上り詰めたオクチョンだったが、その出自ゆえに偏見をもって見られるのは依然として変わらない。
唯一の理解者であったスン(粛宗)に心の変化が? スンが政略結婚で結ばれたイニョン王妃を大切にするのは、彼の優しい性格によるものだと信じていたのに、どうやら粛宗は王妃を一人の女として愛しているようなのだ。
―大好きな彼の眼に映じるのは、私だけじゃなければ嫌。
粛宗の心が王妃に傾いてゆく分だけ、オクチョンの粛宗への恋情は深まってゆく。スンを好きになりすぎたオクチョンの心に次第に王妃への妬みが生まれ―。
そんな中、月の美しい夜、粛宗は美しいムスリ(下級女官)の娘に出逢うのだが―。
************************************************************************
片隅に小さな箪笥があり、夜具が畳まれている。スンは勝手に布団を敷き、女官をそこにそっと降ろした。
「よく養生するのだぞ。上役の尚宮に申し出て医官に診て貰いなさい」
スンは優しく言い、立ち上がった。刹那、スンのパジの裾を娘がギュッと握りしめた。
「待って」
スンが眼を見開き、娘を見下ろした。その時、彼は初めて娘の顔をまともに見ることになった。綺麗な女だとは思っていたが、これほどとは思わなかった。
夏の陽を浴びて咲き誇る向日葵のような、若く健やかな美貌だ。しばし息を呑んで見つめるスンに、娘は弱々しく微笑みかけた。
(中略)
「私はもう行かねばならない。身体には十分気を付けるのだぞ?」
それでも優しい言葉をかけ、彼は娘の部屋を出ようと扉に手をかけた。
「お優しい旦那さま、せめてお名前をお聞かせて下さいませ」
背後から娘の声が追いかけてきて、スンは首だけねじ曲げるようにして振り返った。
「恰好をつけるわけではないが、名乗るような者ではない」
「私は崔華蓉(チェ・ファヨン)と申します。旦那さま」
「チェ・ファヨン。花のように美しいそなたには似合っている、良い名だ」
【本文より抜粋】
側室最高位にまで上り詰めたオクチョンだったが、その出自ゆえに偏見をもって見られるのは依然として変わらない。
唯一の理解者であったスン(粛宗)に心の変化が? スンが政略結婚で結ばれたイニョン王妃を大切にするのは、彼の優しい性格によるものだと信じていたのに、どうやら粛宗は王妃を一人の女として愛しているようなのだ。
―大好きな彼の眼に映じるのは、私だけじゃなければ嫌。
粛宗の心が王妃に傾いてゆく分だけ、オクチョンの粛宗への恋情は深まってゆく。スンを好きになりすぎたオクチョンの心に次第に王妃への妬みが生まれ―。
そんな中、月の美しい夜、粛宗は美しいムスリ(下級女官)の娘に出逢うのだが―。
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片隅に小さな箪笥があり、夜具が畳まれている。スンは勝手に布団を敷き、女官をそこにそっと降ろした。
「よく養生するのだぞ。上役の尚宮に申し出て医官に診て貰いなさい」
スンは優しく言い、立ち上がった。刹那、スンのパジの裾を娘がギュッと握りしめた。
「待って」
スンが眼を見開き、娘を見下ろした。その時、彼は初めて娘の顔をまともに見ることになった。綺麗な女だとは思っていたが、これほどとは思わなかった。
夏の陽を浴びて咲き誇る向日葵のような、若く健やかな美貌だ。しばし息を呑んで見つめるスンに、娘は弱々しく微笑みかけた。
(中略)
「私はもう行かねばならない。身体には十分気を付けるのだぞ?」
それでも優しい言葉をかけ、彼は娘の部屋を出ようと扉に手をかけた。
「お優しい旦那さま、せめてお名前をお聞かせて下さいませ」
背後から娘の声が追いかけてきて、スンは首だけねじ曲げるようにして振り返った。
「恰好をつけるわけではないが、名乗るような者ではない」
「私は崔華蓉(チェ・ファヨン)と申します。旦那さま」
「チェ・ファヨン。花のように美しいそなたには似合っている、良い名だ」
【本文より抜粋】