この作品は18歳未満閲覧禁止です
炎の王妃~月明かりに染まる蝶~
第2章 焔の花の中で~邂逅~
ここで逃げた方が良いのは、誰に言われなくても判っていた。けれど、どうして小さなあのスヨンだけを焔の中に残してゆけるだう? スヨンは彼女にとっては妹のようなものだった。たとえ使用人といえども、彼女はスヨンを心から可愛がっていた。
「お嬢さま(アガツシ)、早くお逃げ下さいまし」
側を駆け抜ける誰かが言った。同じ言葉をかけられたのはもう、何度目だろう。だが、彼女は引きずり出されようとも、ここから動く気はなかった。